フロンガスはオゾン層を破壊する

メタンは、有機物が、酸素の不足している状態で、腐敗、発酵するときに発生すると考えられています。自然の湿地、水田、家畜の腸内発酵、あるいは糞尿や堆肥の処理過程などから発生しています。天然ガスの主成分はメタンですので、天然ガスの採掘からもメタンが大量に発生します。最近、アラスカやシベリアで、ツンドラ地帯が一部解けはじめて問題となっています。将来、地球温暖化が進んで、ツンドラ地帯の永久凍上が解けて、そのなかに固定されているメタンが大量に大気中に放出される危険も指摘されています。

亜酸化窒素は、大気中の濃度は現在三一〇ppbで、毎年〇・二%ないし〇・三%の割合でふえています。一ppbというのは、大気十億分子のうち、一分子だけ含まれていることをあら わします。三一〇ppbというのは、大気十億分のうち、亜酸化窒素が一○分子含まれていることを意味するわけで、いかに微量しか存在していないかわかると思います。亜酸化窒素の温暖化効果は大きく、二酸化炭素の二三〇倍程度で、また大気中の寿命も一五〇年とながく、全体の温暖化のほぼ六%の要因となっていると考えられます。

亜酸化窒素は、海洋、森林の土壌などから自然に放出されていますが、化石燃料バイオマスの燃焼、開墾、肥料などによっても放出されます。フロンガスは、一九三〇年代にはじめて人工的につくりだされた化学物質で、それまでは自然界には存在しなかったものです。フロンガスは、人体に対する毒性が低く、科学的にも安定していて、さまざまな長所をもった化学物質です。フロンガスの合成に成功したとき、奇跡の物質といわれたものです。冷蔵庫、クーラーの冷媒、スプレー、半導体の洗浄など多方面で利用されてきました。

フロンガスには多くの種類がありますが、代表的なものはCFC‐12とCFC‐11です。大気中の濃度はそれぞれ三九三ppt、二二六pptです。一pptというのは、大気一兆分子のうち一分子含まれていることを意味しますから、フロンガスはほんの微量しか大気中に含まれていないわけです。しかし、フロンガスの温暖化効果は、二酸化炭素の数十倍から一万倍で、しかも大気中の寿命が一〇〇年をこえるといわれています。

その上に、フロンガスは、オゾン層を破壊するという危険な性質をもっていることがわかってきました。もともと地球上で生物が生きてゆくことができるのは、オゾン層が、太陽からの紫外線をほぼ完全に吸収して、地表に到達しないようにしているからです。フロンガスによるオゾン層の破壊はすでに現実のものとなっていて、アメリカなどでは白色人種の間で、紫外線の放射能による皮膚ガンの発生率が高くなってきています。最近の研究では、オゾン層が一%減少すると、毎年五万人の患者が発生すると推定されています。