白樺の思想

私の場合には、これについては前史がある。私が一高の文科に入ったのが大正七年、志賀さんの第二の短篇集『夜の光』が新潮社から出た年である。白樺の作家たちが漸く世の中に認められ出した頃で、地方出の多い一高生の間では、武者さんや志賀さんの作品を読…

アメリカの軍事的威信度

一九九七年から九八年にかけての東アジアの金融危機において、IMFは融資の条件として、国家財政の健全化と企業の経営改革とを強く要求した。私は、それを見て、五〇年近く前のドッジラインを思い出した。歴史的段階も危機の原因も全く違うが、企業の経営…

ユーロはこう使われる

「非強制」原則には三つの例外が想定されている。ひとつはクレジットによる支払いで、銀行にはユーロと該当する国の通貨の問で必要な換算をする義務が生じる。次いで、未償還債券の予約建てへの変更、さらに、市場における会計単位の変更である。移行期間終…

社会経済情勢の変化

第二臨調の目的は、「社会経済情勢の変化に対応した適正かつ合理的な行政の実現」とされているように、日本を取り囲む内外情勢の激変に対処する道をさぐることにあった。一九七〇年代に世界は二度にわたる石油ショックに襲われて、日本も深刻な不況から脱出…

無常感はアニミズムが原点

日本の無常感文明と西欧の要塞文明に働く法則について、見てきた。ここではアニミズムから生まれた日本の八百万の神々を中心に日本文明の性格を考えてゆくことにする。いかなる文明にしろ、文明は宗教と深い関係にある。というより、その基層をなすものであ…

機関投資家の実資力

機関投資家の実資力は、六二年六月末で生保八五兆円、特定金銭信託一五兆円、ファンド・トラストニ兆円、年金二三兆円、株式・投信二六兆円とみられている。しかも恐るべきことに、さらに毎年五〜八兆円ずつ仲びているのである。そして、これら機関投資家の…

社会制度の作り直し

エンターテインメント分野の朗報といえば、ビデオソフトがネットワークで借りられるようになることである。現在、ビデオを見るのは、心理的な力べが厚い。ビデオソフトを借りにレンタルショップまで足を運ぶのも面倒だが。楽しみが終わった後に返却に行くの…

不況脱出の方向性

いままではよい技術を導入し、それを洗練させて、よい生産設備をつくり、よい商品をつくればそれで済んでいた。しかし情報化社会では、情報システムをうまくつくって、価値あるソフト情報をたくさん入れることによって仕事が成り立つということが多くなる。…

アメリカの「地域再投資法」に学べ

この不況下で進行しつつある金融再編成の動きは、残念ながら、日本経済の中長期的な展望を念頭に置いたものとはなっていない。それは、結局のところ中小金融機関の切り捨て、あるいは吸収・合併による「集中」化の推進にほかならない。その結果、信用金庫や…

日米欧に共通する危機感

私は、アメリカの一部にある「開発独裁型体制に問題がある」とか、「市場が民主化、透明化していないのがいけない」という議論を全く否定しているわけではない。開発独裁よりも民主的であるほうがいいに決まっている。しかし、それが本当に主因なのだろうか…

ジョンソンとベトナム

いまとなっては、それは誰にもわからない。だがケネディには、ジョンソンにはない柔軟性がめったことだけはまちがいない。彼は昔から、たとえ以前に自分がある考えかたに与していたとしても、その後状況が変わった場合には、いつまでも古くなった主義や主張…

社会保障のリフォーム

日本からスウェーデンにやってくる日本人には、二つのタイプがあるとスウェーデン人や在スウェーデンの日本人はいう。ひとつは″社会保障王国万歳″を声高に唱え、なかには日本に帰って「スウェーデンには寝たきり老人はいない」などと叫ぶタイプ。もうひとつ…

特殊な研究課題

これまで「国民性」研究のためのいくつかの方法を簡単にふりかえってみた。もちろんここにあげた数人の学者以外にも多くの人類学者、たとえばベネディクトやミートなどがあるが、アプローチの型としてはおよそ右の三つに分類できるであろう。ところで、実際…

常在微生物は宿主の老廃物の流れの中に生活している

常在微生物は宿主の老廃物の流れの中に生活しているが、常在微生物も異物であることは病原微生物の場合と変わりはない。ただ大きな違いは、常在微生物は、宿主生体の中の流れを積極的には乱さないことである。けれども何らかの原因で宿主の流れが乱れると、…

大きなシナジー効果

こうした状況を変えるには、私自身も壁を破ってさらに高い目標に挑戦しないといけない。大型買収を決断した理由の一つはここにあります。大型買収によって新しい目標ができれば社員の励みになり、忙しさには忙しさで応える逆転の発想で企業体質を改革するチ…

防衛上の重要拠点国・地域にも気を配る必要がある

また周辺でなくても防衛上の重要拠点国・地域にも同様である。トルコ、ギリシア、韓国、パキスタン、タイ、マレーシア、北欧三国、アイスランド、中央アメリカ諸国、地中海南岸諸国、南ア共和国周辺国などである。その理由は世界地図を一覧すれば充分に理解…

「家制度」の復活阻止に気を吐く

各地の農協婦人部から声がかかり、講演に出向くようになりました。そのころ、夫が大学で研究生活に入り、二人で銀座に開いていた事務所も手が回らなくなってきました。一九五五年には息子の恭吾を出産。住み込みのお手伝いさんには恵まれましたが、子供のそ…

業界団体の意見を尊重する必要性

NHK番組『クローズアップ現代』で、こんな放送を見たことがあります。品確法に基づいて迅速に紛争解決ができるように、判断の規準を作るうということになりました。床の傾きの角度の基準については、「十分の六以上であれば欠陥、それ以下であれば欠陥で…

ドルの通貨としての強味

今日になってみれば、「ドル・ショック」はドルの敗北ではなかった。冷戦下にはヤミ市場で取引されていたロシアやキューバなども含めて、今日ではドルが世界中を覆っている。ロシアなど、かつては米国と対決していた旧社会主義圏では、不安定な自国通貨を尻…

アジア系エリートが世界を制する

もちろん欧米系の外資でも本社のある国を悪し様に言うことは、誰の得にもならないが、特に華人企業では「思うのは勝手だが、喋るのは別」という不文律があることを忘れないほうがよい。しかし、華人企業に職を求める人はそうしたセンシティビティ(感受性)…

なぜ日本はイギリスのようになれないのか

これらのいずれが正しいといえるのだろうか。私は、ロンドンで最近開催された、取締役の役割と取締役会の義務に関するセミナーに参加した際、この問題を熟考させられたのである。その結果、正しい答えはないとの結論に達した。その理由は、日英米開やその他…

徹底したサービス向上を追求する

「ママ、あれ買って〜」「良かったです。買い物しました」「今まであまり二階に上がったことがなかったんですけど、何かやっているみたいだったので」お客の反応も上々のようだ。向かいの中華レストランにも人が流れ込み始めている。上原さんの起死回生の一…

規制緩和のかけ声

省庁再編後も、旧省庁の省益重視の「綱引き」が頻繁に見られるように、行政は依然「縦割り」のままだ。政府に改革を迫るはずの政治家は、国民の付託に応えるというよりも、相変わらず自分の選挙の得票のことしか念頭にない「族議員」が践厄して、かえって改…

糖尿病発症がショック

糖尿病発症がショックで心を入れかえた(男性・初診時四一歳)Bさんは真面目な中学校の先生です。学生時代は痩せていたのですが、教師になってからは、ストレスを食べることとアルコールで解消するようになりました。夕方になるとはとんど毎日つきあいで赤…

組織的比較例証法

それはヴェーバーの理論を土台にした理論的予測であった。その予測から導き出された仮説に基づく、研究プランをベラは考えたのである。それは日本の前近代社会における宗教倫理の研究であり、西洋のプロテスタントの倫理と同じ社会的役割を果たした、日本の…

組織的比較例証法

ヴェーバーの理論を土台にした理論的予測であった。その予測から導き出された仮説に基づく、研究プランをベラは考えたのである。それは日本の前近代社会における宗教倫理の研究であり、西洋のプロテスタントの倫理と同じ社会的役割を果たした、日本の価値体…

建築物の壁面線後退

これが完成すれば、歩道は車道側に一メートル、民地側に二・五メートル、計三・五メートル、現在よりも広がるうえに、重苦しいアーケードが取り去られるやら、ずいぶんひろびろとのびやかになった。さらに角地の部分に、改修を予定していた四つのビルについ…

高血圧症と高脂血症の合併例

定年後、暇ができたので食べ歩きに間食ざんまい(女性・初診時五九歳)Fさんは五五歳頃から高血圧、高脂血症を指摘され、近医から投薬を受けていました。一九八八年五月(五九歳)運動時胸部不快感の精査目的で当科を受診しました。身長一四九センチ、体重…

親子上場を規制する動き

2社の短期間での完全子会社化に際して、当時の金杉明信社長は「西垣浩司元社長時代にコア事業を分担する子会社も上場を目指すことで、企業価値が拡大し、相乗効果が得られるという結論で上場させたが、事業環境が大きく変わる中で、グループ全体にとって最…

実力主義社会

これがなぜ可能かというと、この国のマジョリティーがヒンドゥーであったからだ。ヒンドゥー教には、強制も禁止もない。ヒンドゥーという名称も、本来は「インダス川の向こうにいる民族」という意味で他人がつけた呼び名である。他人からヒンドゥーと呼ばれ…