ユーロはこう使われる

「非強制」原則には三つの例外が想定されている。ひとつはクレジットによる支払いで、銀行にはユーロと該当する国の通貨の問で必要な換算をする義務が生じる。次いで、未償還債券の予約建てへの変更、さらに、市場における会計単位の変更である。移行期間終了時におけるユーロの紙幣と硬貨の導入と、各国通貨の紙幣と硬貨の市場からの回収。

一九九九年一月一日にユーロは誕生した。三年後の二〇〇二年一月一日からユーロ紙幣とコインが流通する。ユーロ誕生の日に、フランクフルトのウィリー・ブラント広場に集まった市民は、市の広報活動で皆そのことを知っていた。しかしわたくしは広場でのインタビューでこの三年間の移行期におけるユーロの使い方に市民がいくぶん戸惑いを見せていることも感じた。それはECUが市民の生活レベルではそれほど日常的に使われていなかったことを意味する。

ECUは本来国際通貨であって、市民生活のレベルでは、マルク、フラン、リラという各国通貨が幅を利かせる。市民にとってはこれが当たり前のことであって、ECUは何か遠い宇宙からきた通貨としか思えなかったのである。それがこともあろうに、日常生活に使われはじめ、マルクもフランもやがて姿を消すらしい。市民の戸惑いもそこにある。マルクやフランへの郷愁という問題以前に、ユーロをどうやって日常生活に使うのか。

こうしてEU委員会や各国公共機関による必死の広報活動が始まった。部外者のわたくしが代弁するより、EU当局に登場してもらったほうがよいだろう。EU委員会が配布したパンフレットの質疑応答の一部から。「単一通貨の利点は何ですか?」利点はたくさんあります。一つの例として、単一通貨の出現で、共同体を旅行する人はもう通貨を両替する必要がなくなります。今までと違って、両替のための時間も費用も節約できるのです。銀行に払われた両替料はなくなります。