二人の仕掛人

暴力団が関係するフロント企業の資金調達に、新興株式市場が悪用されない枠組みを早急に作る必要があるという点て、東証と警視庁は一致したわけだ。上場の水際でフロント企業をくい止めることができるかどうか、注目される。とはいっても、ネットベンチャーの大量・無差別上場時代を迎え、ダーティーマネーをマネーロンダリングして、さらにそれを膨らませる絶好のチャンスが訪れたことはまぎれもない事実だ。

一九九九(平成十一)年四月に、株式市場に異変が起きていた。ベンチャー企業の株価が急騰を始めたのだ。ソフトバンク光通信の株価はジェット気流に乗って舞い上がり、この一年間で光通信株は三十倍になった。これが孫正義や重田康光を世界有数の大富豪に大化けさせる直接の原因となった。この頃、株式市場で一つの噂が囁かれていた。この噂については前にも若干触れたが、ここでは少しくわしく分析する。「ベンチャー企業の創業者たちが、お互いの株を買い支えて、株価をつり上げている」というものだ。

中堅証券会社が設立した私募ファンドが舞台だ。この私募ファンドにベンチャー起業家たちが資金を出し合い、ある企業の株式に集中的に投資し、株価を操作するという内容だ。ベンチャー企業は会社の規模が小さい。当然、資本金も少ない。株式市場に流通している株式(浮動株という)は少ないから、買い注文を集中させれば、株価はおもしろいように上がる。株価が上がれば、それを買い材料にして、資金がまた集まる。

ソフトバンク孫正義社長)、光通信(重田康光社長)、アルゼ(岡田和生社長)、ドン・キホーテ安田隆夫社長)、グッドウィルグループ折口雅博会長)。株価が乱舞した代表銘柄だ。中でも、インターネット検索サービスのヤフー(井上雅博社長)の株価は二〇〇〇年一月十九日に、とうとう一億円を突破した。ヤフー株の額面は一株五万円である。こうしたネット株の狂乱の過程で大富豪が続々誕生した。