アメリカの「地域再投資法」に学べ

この不況下で進行しつつある金融再編成の動きは、残念ながら、日本経済の中長期的な展望を念頭に置いたものとはなっていない。それは、結局のところ中小金融機関の切り捨て、あるいは吸収・合併による「集中」化の推進にほかならない。その結果、信用金庫や信用組合の数が「着実」に減少しつつあることは指摘した通りである。

こうした「集中」化推進の論理は、「自由化」による競争促進とそのことによる金融効率化の実現ということであって、地域分散や中小企業金融の安定性等の問題は、「市場メカニズムへの依存」という事のなかに埋没してしまっている。

しかし、一般的にいって、市場メカニズムは、「集中」を媒介するものではあっても、「分散」を誘導するのは難しい。バランスのとれた「分散型経済」を実現するためには、むしろ市場メカニズムに対する一定の効果的なコントロールが必要になる。

そのことを示すものとして、ここでは、アメリカで実施されている「地域再投資法」(CRA= Community Reinvestment Act)に関する事例をみておくことにしよう。同法は、一九七七年、地域の低所得者やマイノリティーなどに対し、金融機関がその融資活動で差別的な扱いをすることを防止する目的で制定されたものである。同法によって、連邦金融監督機関は、金融機関が地域の金融ニーズの充足に継続的に貢献するように、その権限を行使することを義務づけられている。その権限は合併や支店開設などの申請に際して行使され、金融機関の地域貢献が不十分であると判断されると、その申請は認可されないことになる。

たとえば、一九八九年二月、連邦準備銀行理事会は、シカゴを拠点とする大手銀行であるコンチネンタル銀行からの銀行買収の申請を、「地域再投資法」に関する活動(CRA活動)が不十分だという理由で却下した。